ふと目が覚めた。時計を見るとまだ6時だ。
やれやれ、せっかくの日曜日だというのに、昨日引っ越して来たばかりなのかこの環境にも早 くなれなければな。しかし、一度目が覚めると寝れなくなるのが辛いものだ。
引っ越してきたのは2LDKとそれなりに広い家だが、なぜ父さんは元の家を売り、遺産をこ の家に継ぎこんだのかが未だに謎だ。父さんは私がまだ幼い頃、6歳頃にここを引っ越したと 言ってたが。ここが好きだったのか、改めて考えてみるとそうなるかも。
このままボーッと過ごすのも時間の無駄だしな、簡単な朝食でも作るか。
初めて立つ台所だが、やる事は変わりない、まだ荷造りされたままの調理用具を取り出して早 速調理にかかる事にした。ご飯、味噌汁、焼き魚と一般的に知られている日本人の朝食だ。足 りない物もあるが気にしない。
テスタメントが朝食を作っている時に、ガチャリとドアを開ける音が聞こえた。
振り向くとパジャマ姿の女の子がいた、起きたばかりで、うつむきながら目をこすっている。
妹のサキュバスだ。
「おはよう兄様、やけに起きるのが早いね」
「おはようサキュバス、おまえこそ早いじゃないか」
「何かいい匂いがしたから、朝ご飯?」
「正解、もうすぐ出来るからその間に着替えて来い」
私が言った通り、サキュバスは着替えに行き、その間に準備を整えた。
朝食を終えたものの、時間はたっぷりとある。どうも何もしないでじっとしているのは苦手だ。
しかたない、学校の下見にでも行くか。この環境の慣れにでもなるしな。
自室に戻り、ロッカータンスから制服取り出した、まだビニールに包まれた新品の制服だ。
サキュバスも一緒に行くと言ったが、高校と中学では全く逆の方向、家を出た時点で逆へ行く
幼いころ、ここら辺に住んでいたのらしいのだが、ほとんど記憶にない。適当に思い出しながら 歩いていたらいつの間にか学校についていた。グランドを見ると野球部の練習が見える。
特に入部する気はないが、どこの高校も野球部は気合が入ってると改めて思う。
少し校内に入ってみようと思ったが、どうやら誰もいないらしく、扉は開かなかった。
「あれー君、何かここに用があるの」
急に後から声をかけられたので、驚き気味で後を向いてしまい、逆に驚かしてしまった。
小さめの金髪の女の子がそのまま後へ下がり、落ちていた石で足をつまづき、尻餅をついた。
「いたたた、何するんですかあなた」
「すまん、急に声をかけられたものだから」
「それが先生に対しての謝り方ですか、はい、もういちど」
……一瞬時が止まった用に感じた。これが教師なのかと、どっからどう見たってそこら辺の女子高生、下手したら中学生に見えてしまう。
「すみません、昨日引っ越してきたばかりなのでここのことを全く知らないので」
そう言ったらこの先生(?)は納得したような顔でうなずいていた。
「あなたですか、明日から来る転校生って、でも今日は休日ですよ、ちなみにうちが担任のブ リジットです、よろしく」
「よろしくお願いします、暇でしたから少し下見に来てみたのです、先生はどんな用が合って ここに」
いつの間にか、この人を先生と呼んでいるが、傍目から見ると妙な光景だ。
「野球部の応援ですよ、うちが頑張れって言うと凄く気合が入るのですよ」
たしかに、こんな先生が応援をしたら気合も入るだろう。
少し野球部を見てみると、先ほどよりもずいぶんと気合が入っている。一部の奴は『ブリたん キター』と叫んでるが、大丈夫なのか。
「皆うちにメロメロです〜」
平気な顔をしてなんてことを言ってくれるんだこの教師は
そんな自信満々で言われても困るのだが、今日会ったばっかなのにこんなのが本当に教師でい いのかと考えてしまう。ま、それでやっていけてるから良いんだが。
「それでは、うちはもう行きますから、気をつけて帰るように」
「わかりました、ではさようなら」
やれやれ、ただ下見に来ただけなのに、私はちゃんとこの学 校で生活をしていけいけるのか…不安だ。来たばっかなのに。
とりあえず何事も無く帰宅できた、なぜこんなことだけでこんなにも安心できるのだろう。気 付いたらもう昼過ぎ、サキュバスはとっくに帰ってきていた。
「おかえり、兄様、そっちの学校はどうだったの」
「早々驚かされたよ、それより、早くこの荷物をどうにかしないとな」
「そうだな」
それから、一日掛でどうにか整理がついた。箱に書かれた文字を無視して中身を確認した時に サキュバスの服や下着が出てきた時はさすがに焦った。
「さて、明日ある授業は…」
ブリジットから貰った時間割表を見ながら、テスタメントは教科書、ノートなどを鞄の中に入 れていく。もし今日会っていなかったらほぼ全教科を持っていくことになっていただろう。
むこうが何も用意してくれなかったからだ。忘れられたのか。
「おやすみ、兄様」
ドアの向こうからサキュバスの声が聞こえた。
「おやすみ」
返事を返して、私もベットに横になった。

壱話に続く。



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