そろそろ来る頃かな。
いや、もともと決められていた時間だ。正確に言うと来たと言ったほうが正しいと思う。
普段と変わらない日だが、一つの名前が付けられるだけで学校全体に変化が起こる。それにより10割近くの生徒が懸命になって机に向かうだろう。
かといって本当に懸命になるのは3日前からで、他の四日間は普段との生活と変わらない物も複数といる。そんな特別の一週間。
そう『テスト週間』。中高学生だった人なら必ず聞いた事ある言葉だ。
「兄さ〜ん」
テスト前日の放課後、小動物のように弱々しくディズィーが話しかけてきた。
「今日、一緒に勉強しましょう」
その顔はまるで雨の中で捨てられて子犬や子猫のような目をしていた。
「いいぞ、それでいつやるんだ」
前日だけあって授業が午前中で終わり、この制度がこの学校では珍しいと思えるか、たとえ前日でも授業は6時間が普通だと。でもこの方が十分に範囲を再度目を通せる。
「ご飯食べてからメール送りまから、その後は兄さんのいい時間で送ってください」
わかった、と返事を返し私は先に教室を出た。
明日の教科は…たしか数学と歴史だったな。歴史は暗記物からな、デイズィーとは数学を集中的にやっておくか。
テスタメントは昼ご飯を食べた後にメールを送った。向かいの家とはいえ、3分経たないうちに来るとは早いものだ。
なのでまだ準備が出来ていない。出来た事と言ったら食器を洗った事ぐらいだ。
「おじゃまします」
礼儀良く、ペコリとお辞儀をお辞儀をして靴を脱いだ。
「用具を持ってくるから、先に奥の部屋にあるテーブルで待ってろ」
ディズィーがリビングに入るのを見てから私は自室に戻り、勉強用具を取りに行った。
戻るにして、すぐに勉強会を始めた。
「兄さん、この問題教えてください」
「これはこの公式の応用でこのXとYを…」
などと、ほとんど家庭教師に近いような立場になっていた事にテスタメントは気付いていたのか、いなかったのか。
刻々と時間は過ぎ、時計を見たらすでに6時を過ぎている。
「ふぅ、これ位にしておくか」
「はい、ありがとうございました。でもよかった兄さんが数学できたから」
満面の笑みで答えられた後の台詞、どうやら相当数学がピンチだったみたいで私が一つの賭けみたいなものだった。もし出来なかったらと聞いたら少し悩んでから小声で答えた。「ミリアさんカイさん」と。
「え、でもそのあの、私は兄さんと一緒にできて、あの」
「落ち着け、私もいい復習になってよかった」
ホッとディズィーは手を胸に抑えて落ち着いた。
「教えてもらった身を考えて、赤点だけは取らないようにな」
「はーい」
持ってきた勉強用具を鞄の中に収めて、座布団から立とうとした時、ディズィーは体勢を崩し
ガン!!!
机の横角に思いっきり頭をぶつけた。見ている方も痛い。
おでこ辺りを両手で抑え、うつぶせの状態でディズイーは丸まったまま無言のまま小刻みに震えている。相当痛いようだ。
「痛い〜痛い〜」
半分泣いた声がリビングに響く。
「…大丈夫か」
「はい、なんとか」
まだおでこから手は離れていないが、しゃべれるまで回復したからもう大丈夫だな。
原因は単に足が痺れただけ、立とうとした時に足首の感覚が無くてぐにゃぐにゃと変な方向に曲がったような感じになってしまって体勢を崩した。
感覚を取り戻して、ディズィーはゆっくりと立ち上がった。
「それじゃ、兄さんまた明日」
軽く笑みをしながらテスタメントは言った。
「明日な、さっきので全部忘れてなければいいがな」
「大丈夫ですよ」
玄関の扉を開けて帰っていった。ドアを閉める際にディズィーは小さく手を振った後にドアはバタンと音を立てて閉まる。
「さて、そろそろ夕飯の準備でもするか」
晩御飯の後は歴史を集中的にやった。
数学と歴史、公式を覚えればちゃんとできるが、応用問題が面倒臭い。歴史は単なる暗記物。覚えればいい単純な事でできるが範囲が多い。どっちが嫌な教科といわれても人それぞれだよなこれは。同じ日の科目はどうも比べてしまう。

翌日、期末テスト本番だ。
教室に入るなりノートや教科書を取り出してギリギリまで粘る。一人でやっている者や、グループになってお互い教えあったりしていたりする。ちなみに一時間目は数学だ。
「どうだディズィー調子は」
「はい、おかげさまで絶好調」
「ねえねえ、二人で何かやってたの」
「昨日兄さんに数学をみっちりと教えてもらったんです」
「あ!ずるい」
ずるいって、メイは不機嫌な子供のような表情をして小声で唸った。
教えて教えてとせがんでくるメイにテスタメントは残り少ない時間を使ってできる限り教えた。
ちゃっかりと横にはアクセルもいたりして、チャイムがなった後二人は「ありがとね〜」と言って自分の席に戻っていく。
「お疲れ様」
ポンッと肩を叩かれた。叩いた主はカイだった。少なくとも最初と最後は見られていたらしい。
「中間テストの時の自分を見ている感じでしたよ」
「はは、さすがに連続で直前に『教えて』は駄目だったみたいだな」
なんて事を言っているうちにブリジット先生が教室に入ってきた
「はーい皆席について筆記用具以外はしまってね」
プリントがくばられて最初のテストが幕を上げる。

「というわけで今日はテスト最終日です」
「ディズィー、一体誰に向かって喋っているんだ」
「秘密です」
最終日は保険一教科のみ。
「それじゃ、始めますよ」
一学期最後のテストが行われた。
終了と同時に教室内は多くの「終わったー」と言う声でいっぱいになる。
「おーっすテスタ、ようやく終わったな」
肩を叩いて来たのはアクセルだった。
「そうだな。肩の荷が軽くなって楽になる」
「そりゃ良かった事、でどうだ、今日はテスト終了ってことでお前んちでパーッとやらないか」
「私は別に構わないが、何でうちなんだ、そこらのゲーセンやカラオケとか…」
言ってはいけなかったらしい。アクセルは数秒時が止まった様に動かなく、右手を後頭部に当てて爽やかに言った
「俺様今月もうピンチなんだよね」
ちなみに今日は月末辺りです。
「事情はわかった。適当にメンバー集めて2時ごろにうちに来い」
授業は最初の保険だけなので一時間で終了。平日でこんなに早く帰れて自由な時間を得られることに喜びを隠さない学生はいないに等しいに違いない。そう作者(キウァ)もその中の一人に入ってる。
(だから作者が出てくるな!)誰の声ですか!?
ここから本編にお戻りください。
「了解」
軽い敬礼をしてアクセルはその場を立ち去った。
そしてすぐに近くに居たメイに声をかけた。話を聞き終えたメイは親指を立ててOKサインを出した。テスタはその瞬間を見てたのでこれでメンバーが一人わかった。
帰りのHRも終わり一足先にテスタは教室を出て行く。それを追いかけていくようにディズィーが小走りで付いてきた。
HRではテストが返された。返されたのは、数学と化学と英語。
「はぁ、追いついた。もう置いて行かないで下さい」
一緒に帰ろうと約束した覚えはないが、向こうはその気らしい。
「すまん、ところで、さっきのHRで返されたテスト、どうだった」
「はい、兄さんのおかげでばっちりでした」
これまでに無いような微笑をむけられてた。結構良かったのかな。そっちのほうが教えた方の身になっても嬉しい。
「63点です」
・・・微妙、だけど平均点が60だったからな。
「あと化学が63で英語が…42でした。兄さんはどうでしたか」
「数学が96、化学が87で英語が92だ」
「・・・そんな、この差はなんですか」
ガクっと肩を下げた。そんなにも大きなショックだったのか。
帰り道で問題の答え合わせなどしながら帰路を辿っていった。ディズィーは何回か「しまった」などの顔をして悔しがったりした。
「2時ごろ、兄さんの家にいきますから」
お互いの家の前についた頃に言われた。多分メイかアクセルにこの話を聞かされたと思う。
部屋に戻って時計を見てみた。
「11時半時か」
着替えを終え、キッチンに向かおうとして階段を下りる時にガチャと玄関のドアが開いた。
「たっだいま〜」
サキュバスが元気な声で帰宅してきた。
「おかえり、ずいぶんと早いな」
「今日はテスト終了日だから。早く帰れたの」
「そうか、2時頃に結構人来るが、お前はどうする」
「どうするって言われても、一緒にいてもいいですか。予定ないし」
「いいぞ」
順番から昼ご飯を作るのはサキュバスなので、それまでゆっくりする事ができた。
出されたのはオムライスだった。本人曰く今回の出来は最高らしい。とりあえず一口食べた。
「…腕を上げたな」
「十八番だもん」
食器を洗い終えた頃時間を見るとまだ12時半。まだ時間はある。
食べたばっかで寝ると牛になるというが、今だけはそんな事どうでもかった。とにかく眠い。
テスタメントはリビングのソファーで横になり眠りについた。


七話に続こうと思います。


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